印刷工場の現場で活躍する身近なアイテムの意外な使い方。

印刷部
2020年5月15日

普段印刷工場ではインキ汚れを落とすための溶剤、版を保存するための溶剤、裏移りを防止するためのパウダーや防腐剤などなど、様々な専門の薬品を使用して印刷作業を行っております。
しかし場合によっては家庭でも使われているようなアイテムが活躍する場があったりするので本記事ではそんな身近なアイテムを紹介したいと思います。

洗剤

手を洗ったり体を洗ったり普段の生活に欠かせない洗剤。
印刷現場ではその性質を利用して滑りやすくしたり剥離性を高めるために用いります。

コンディショナー

印刷機械のフィーダーベルトに塗布して紙の滑走性能を高める効果があります。
滑走性能が落ちると見当不良(印刷位置にバラつきが出る)が起こりやすいので非常に重要なポイントでもあります。
専用のスプレーも常備していますが、すぐ蒸発してしまうため持続性が高いコンディショナーと併用して使用することが多いです。

石鹸

穿孔機(穴をあける機械)のドリルに塗布します。
ドリルを長時間使用していると穴をあける際、紙との摩擦でドリルが上手く抜けなくなる事があります。
そんな時石鹸を塗布することで紙とドリルの摩擦を低減して作業をスムーズに行えるようになります。

生活雑貨

調理用ラップ

インキは時間が経過すると膜を張ります。
勿論膜の部分は印刷には使用できないので破棄することとなります。

特色など少量しか使用しないインキを保管する場合そのまま放置するとインキが少量しかないため膜を張ってしまうとほとんど使い物にならなくなってしまいます。そんな時調理用ラップをかけて保管することで少量のインキでも一時的にではありますが保管できるようになります。

タッパー

印刷においてインキを丁度使い切るという事は非常に困難であり必ず少量のインキは残ってしまいます。
この扱うインキが当社のスタンダードカラーであれば元のインキ缶に戻せば済むのですが、特色になるとこのまま破棄することとなります。
このムダを無くすため、さすがに何百とある特色全部を保管という訳にはいきませんが、中でもリピート率の高い特色限定でインキを保管するためタッパーを使用しています。
特にタッパーである必要は無いのですが、幾つか候補に挙がった容器の中から入手のし良さ、コストパフォーマンスの良さから使用することになりました。

ティッシュペーパー

当社で採用しているオフセット印刷ではブランケット(ゴムの版の様なもの)介して印刷を行っています。
このブランケットは印刷過程で埃を踏んでしまったり様々な要因でへこむ場合があり、ブランケットがへこんでしまうとその箇所にはインキが乗らなくなってしまいます。
そういう場合機械側の圧調節でもある程度解決はできますが、へこんでいない箇所の圧が上がりすぎるので別のトラブルの発生の元になってしまいます。
そんな時に活躍するのがティッシュペーパーです。ブランケットのへこみ箇所を確認して裏側にティッシュを貼り付けるだけで完了。小さなへこみなどの応急処置として対応できます。

養生テープ

上記のティッシュと使い方は違いますが印圧を上げるという意味で使用していました。今現在は印刷専用の物を使っているため使用はしていませんが、当時は必須アイテムだった為、紹介させていただきます。
主な用途として封筒印刷時に使用します。封筒は紙の印刷と違い貼り合わせの部分があります。当然貼り合わせの部分は圧が上がり、それ以外の箇所は圧が下がってしまい印刷にムラが出来てしまいます。
こちらも機械の圧を上げることである程度解消は可能ですが、窓付き封筒の場合セロ窓部分にキズが入ってしまったり、圧を上げ過ぎる事でブランケットが長持ちせずコストパフォーマンスが悪くなってしまいます。
なのでブランケットを巻いているブラン胴の下にある圧胴と呼ばれる箇所に養生テープを貼って部分的に印圧を上げることで印刷ムラを無くし封筒の貼り合わせ箇所など綺麗に印刷が仕上がるようになります。
また作業終了時、剥がし易いのも養生テープの使い勝手のいいところです。

歯ブラシ

印刷機械の汚れはインキ汚れの他に、紙粉や埃が細かい箇所に入り込み更に油汚れが混じってかなりがんこな汚れがたまります。
なので機械の清掃時には細かい箇所の汚れを掻きだせる歯ブラシが活躍します。

鍋(+電気コンロ)

静電気が起きた時、様々な手は尽くしますが最終手段として鍋と電気コンロが大活躍します。
静電気対策の記事に詳しく詳細が載っていますのでこちらを参照してください。

電化製品

意外な使い方ではありませんが、家電も活躍します。

ドライヤー

主に特色インキの作成時に使用します。
特色インキの作成に使用するインキの種類にもよりますが、インキは乾くと赤みを帯びてきたりと若干の変化があります。
なので乾燥した色を確認する為ドライヤーを使用します。
あと冬場限定ですが、朝一はインキが冷えて非常に硬い状態になっています。
インキが硬すぎると中々インキローラー全体に行き渡らないため、温めて柔らかくする際にもドライヤーを使用することがあります。

ドライヤー使用時の注意点

インキを乾燥させるという事で一度乾きにくい用紙の印刷時、早く乾燥させたかったためドライヤーを当てたことがありましたが、用紙が乾燥してしまいタイトエッジ(用紙がカールしてしまう)現象が起こってしまった事がありました。本紙へのドライヤーは注意が必要です。

ちなみにインキを乾燥させる添加剤ドライヤーという薬品も常備しております。

扇風機

機械は長時間運転し続けると熱がこもってしまい、機械の熱がインキに伝わり柔らかくドロドロになって地汚れ(印刷箇所以外のところが汚れる)が発生したりトラブルの原因になります。
そこで機械の熱を逃がすために扇風機を使用します。
夏場は欠かせない家電です。

冷蔵庫

インキには硬度があります。柔らかいものから硬いもの季節に応じて使い分けますが、その硬度は様々で例えば赤色のインキは柔らかいものでも硬めだったり逆に青色のインキは硬いものでも柔らかかったりします。
なので特に熱がこもりやすい夏場は柔らかいインキを硬くするために冷蔵庫で保管する場合があります。
インキが柔らかくなりすぎると汚れの原因となるため非常に効果的です。

保冷剤

電化製品ではありませんが冷蔵庫で冷やしたインキと併用して使用するのでこちらで紹介させていただきます。
一度冷蔵庫で冷やしたインキをインキつぼに入れただけでは短時間の効果はあっても長時間維持するのは難しいです。
その理由としてはインキローラー自体が運転時摩擦で熱をもっているためです。そこでインキローラーのカバーの上に保冷剤を設置してローラー自体を冷やしながら印刷することでより安定した印刷が可能となります。

 

その他

ガラス板(元窓ガラス)

特色インキを練り合わせる際に使用します。通常金属のお皿や使用済みのアルミ版を使用したりするのですが、当社ではガラス板を使用しています。
ガラスは硬く、透明でインキの練り具合を確認しやすく平滑性が高いのが特徴です。
欠点としては窓ガラスを加工して作った特注品であるという事、割れると替えが利かないという事です。

 

まとめ

以上がイセン印刷の工場で活躍する身近なアイテムの紹介でした。
身近なアイテムが活躍する印刷の現場、これは印刷に携わる先人達の知恵であったり、外注先の方からのアドバイスからヒントを得たりして使用するようになったものです。
勿論突然使い始めたという物はなく、その前提に様々なトラブルや課題がありその都度考え、アイデアを出し合い採用に至ったという経緯があります。中には失敗する物もありましたが、その失敗を生かし次に繋がった物もあります。
もしかしたら他の印刷工場ではもっと意外な物や当社とはまた別の使い方など独自の発展があるのかもしれません。

 

 

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