気持ち次第で意外と楽しい作業!~間違い探しのお仕事「校正」を考えます~

印刷部
2019年3月10日

「期日までに校正をお願いします。」

印刷・出版業界に従事されておられる方以外でも、例えば会社の広報誌を編集されていたりだとか、自治体のお知らせを作られた事がある方、卒業や転校などで文集を作成された方、様々な方が一度は口にしたか、耳にしたことがある言葉だと思います。非常に手間のかかる作業なのですが、必ず行わなければならない作業でもあります。そんな「校正」を少しでもわかりやすく、楽しくするために考えてみたいと思います。

校正について

校正とは?

wikipediaによりますと「印刷物等の字句や内容、体裁、色彩の誤りや不具合を、あらかじめ修正すること。」と書かれています。具体的に言えば原稿と版下を見比べて間違いがないかを探す作業ということになります。

校正の種類

文字校正

その名のとおり文字の間違いが無いかを探す作業です。印刷物において、そのミスの多くを占めるのが誤字脱字です。そういったミスを未然に防ぐ為に行います。

色校正

印刷物の発色・色目を確認するために行います。ここで注意しなければならないのが、本刷と同じ印刷方式で色校正を行わなければならない、ということです。オフセット印刷を予定していながら、オンデマンド印刷のプルーフで色校正を行っても発色方式が異なるため、効果的な校正にはなりません。本刷と同じ印刷方式で出力された校正を「本機校正」といいます。

図版校正

記事に挿入する資料やカットなどが指示通りの場所に配置されているか、また枠などの装飾が指示通りになっているか、などを確認する作業です。

校了・責了

校正の過程を経て間違いがないと判断され、その過程が終了したことを「校了」といいます。また印刷所側の責任で校了の判断をすることを「責任校了(責了)」といいます。初校→再校→三校→四校→・・・と校正を繰り返してこの校了までたどり着きます。この段階まで来るのは、とても手間と時間がかかります。

校正と校閲

校正と似たような言葉で校閲というものがあります。人気の女優さんを主役に起用したテレビドラマでフィーチャーされたこともありますので、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。

校閲とは

校正と同じく編集の段階で間違いを探し出す作業ですが、校閲の場合は文章の意味だとか文章どうしの整合性をとったり、場合によってはその文章の事実確認までを行う作業です。

校正と校閲の違い

校正の場合は2つのゲラ刷(原稿と初校や、三校と四校など)を比較して違いを確認する作業で、基本的に文字を読むより、文字を見る作業だと思います。それに対して校閲は原稿そのものを読んで意味を考え、その間違いを修正する作業です。

校正する

必要なもの

校正を行うにあたり、必要なものや、あると便利なものが何点かあります。

赤のペン

校正をすることを「朱をいれる」だとか「赤入れする」といった表現をします。修正や訂正は赤のペンで記入されます。

付箋

修正のはいった場所に貼り付けたり、冊子の場合は修正のあるページにインデックスのように貼り付けて修正箇所をわかりやすくします。また、付箋に直接確認事項などを記入して確認をとることもあります。

辞書

国語辞典や漢字辞典、英和辞典など。文字やスペルなどを調べたり、単語などが誤用されていないかなどの確認を行います。

鉛筆

校正のプルーフに直接疑問や、確認事項などを記入する際には鉛筆やシャープペンシルを使います。この作業を「鉛筆出し」といいます。

定規

断裁の線を引いて仕上がりの大きさを示すのに使ったり、図や写真、カットなどの変更の際に使用します。

校正記号

校正をする人、それぞれが自分の言葉で修正や確認を行えば、伝わらなかったり、間違って伝わってしまったりといったトラブルが起こってしまう事態にもなりかねません。そこで共通の記号を使って修正を行います。この記号を「校正記号」と言います。

校正の方法

校正には様々な方法があります。基本的には1人で原稿とプルーフを見比べながら行いますが、あまり楽しい作業とは言えません。そこで効率的で尚且つ、ちょっとだけ楽しくなる方法をご紹介したいと思います。

読み合わせ

プレイ人数:2人~
主に冊子ものや、記事などの文章を声に出して読み上げ、それを残りの人が目で追いかけて間違いを探す方法です。メリットとしては校正をする人数が多いこと。多ければ多いほど精度が上がります。しかしながら責任も同時に薄れて行きますので、リーダーを決めて作業するといいと思います。

めくりあわせ(通称:パタパタ)

プレイ人数:1人~
「あおり」とも呼ばれる校正方法です。校了後の決定稿と版や、再校と三校など、二つの原稿を二枚重ねにしてピッタリ同じ位置に合わせ、一枚目の原稿を高速でめくったり戻したりします。すると、変更された箇所がすぐに分かります。その動作から、一般的にパタパタと愛称で呼ばれるています。

交差法

プレイ人数~:1人~
以前に流行った「立体視」を応用した方法です。2枚のプルーフなどを平行に並べ、右目で向かって左のプルーフを、左目でもう一つのプルーフを見ます。ちょうど視線が2枚のプルーフの前で交差する形になりますので、交差法と呼ばれます。2枚のプルーフの中央に1枚のプルーフが浮かび上がって見えてきます。異なる箇所だけ見え方が変わりますので、変更箇所がすぐにわかります。この方法で校正ができるようになると、新聞や雑誌の間違いさがしが瞬間的に見つけられるようになります。

まとめとご提案

人間の脳はすごく良く出来ていまして、多少の間違いなら無意識にその間違いを修正して理解してしまいます。とても優れた機能なのですが、校正という作業にとってはこの機能が邪魔になったりします。如何に文字を「見る」か、単語や文章を「形」として認識するか、が重要なのではないか、と思います。

校正は作業をする人の責任も重く、難しい作業です。が、本文中に述べたように作業の内容は「間違いさがし」のゲームと同じです。違いは、楽しいか楽しくないか、自発的に出来るかどうか、絵か文字か。ゲーム感覚で校正することが出来れば、今まで以上に間違いを発見することに対してのモチベーションも上がりますし、時間の短縮にも繋がると思います。

楽しく思えるようなるために、まずは他人の校正ミスを責めるのではなく、間違いを「見つけてあたりまえ」の感覚から「よく見つけてくれた」という感覚にシフトしていくべきだと思います。「甘い」と思われるかもしれませんが、勝負の世界では成功して当然は有り得ません。成功したら評価されるべき事柄です。このことが校正に携わる人間の間口を広げ、ポジティブな姿勢で校正と向き合うために必要な条件のように思われます。

企業や部署の努力の末、校正は楽しいもの、という思いを持つに至ることができれば自ずと誤字・脱字を含め、その他の多くのミスも減少していくのではないでしょうか?