個性の演出は紙の選択から!印刷の現場が色々な「紙」を考えます

印刷部
2018年10月10日

 

現在はペーパーレスの時代と言われています。

街へ出れば電子書籍のみならず家電やソフトウェアのマニュアル、社内でも会議資料やメールでのやり取りなど、印刷会社ですら紙の使用頻度は下がってきています。ニュースをみればネット銀行ではない普通の銀行も預金通帳を電子化しようとする動きがあるとか。世の中の大きな流れとして紙の消費が抑えられてきていますし、今後ますますこの流れは速く、大きなものになっていくと思います。

そんな時代の過渡期だからこそ印刷会社の印刷部門として今一度改めて紙について考えてみたいと思います。

 

紙を知る

紙の歴史

現代のように紙が流通する以前は人々はどのように記録を行っていたのでしょうか?ものを記録するためにはその媒体が必要になります。紙の発明以前は粘土板や木簡などが使われてきました。その後、世界最古の紙が今の中国にあった漢という国で作られていたと記録が残っています。粘土板や木簡のようにかさばらず保存ができるので中東アジアのイスラム圏からヨーロッパへと伝播していったようです。日本へは7世紀くらいまでに伝わったとされています。

紙の定義

日本工業規格(JIS)では「植物繊維その他の繊維を膠着させて製造したもの」と定義されているようです。つまり、繊維以外のもので製造されているものは紙ではないということができます。身近なところで言うと選挙の投票用紙はユポという紙なのですが、ユポには繊維が使われていませんので、日本工業規格の言うところでは投票用「紙」は「紙」ではない、ということになります。ちなみにペーパーの語源にもなった古代エジプトの「パピルス」も上記の定義に当てはまらないため、「紙」とは認識されていません。

様々な印刷用紙

印刷とは切っても切れない関係にある、紙。実際に印刷工場ではどのような紙が使われているのでしょうか?

上質紙

最も一般的な用紙です。皆様がお使いの単式伝票やノート、メモ帳や診療録、問診票、書籍や薬袋に至るまで、白い紙はほとんどこの上質紙が使われています。

色上質紙

上質紙に色がついたものです。上記と同様の用途の他、ちょっとコシが弱いですがポイントカードやスタンプカードに使われることもあります。色の数はしばしば更新され、現在は30を超える種類があります。印刷で個性を演出する場合、一番最初の選択肢になる場合が多いです。

コート紙

上質紙の表面に光沢のある物質をコーティングしたものです。上質紙と比較して光沢があるので印刷インキの発色がよく見える、明るく見えるなどの効果があります。特にカラー印刷で効果的な紙だと思います。光沢物質の量が増えるとアート紙と呼ばれるようになります。

複写用紙

2枚複写、3枚複写またはそれ以上の伝票等に使われる感圧紙です。1枚目に記入したものが2枚目、3枚目に写ります。伝票や明細などは電子化などのあおりを受けて徐々に複写用紙の活躍の場が縮小しているように思います。ちなみにこれには、浅黄色、ピンク色、クリーム色とバリエーションがあります。

 

紙を考える

紙の現状

今現在、印刷業界は斜陽産業だと言われています。そしてそれを一因とする形で紙の需要も減少傾向にあると言われています。タブレット端末の登場により電子化の利便性が飛躍的に向上し、今後もその傾向は加速度的に伸びていくと思われます。

データの優位性

通信速度の高速化や、圧縮技術の進化などの影響で、写真がフィルムからデジタルデータに、音楽や映画もCD・DVDなどのメディアから配信へとそのサービス形態が変化してきています。データを記録した媒体からデータそのものを商品として扱えるように変化してきました。これと同じことが紙にも言えます。紙はデータを記録した媒体でしかないので紙自体の存在意義は少なくなっています。紙の上に書かれたものが商品としての価値を持っているからです。最近では作家さんや漫画家さんもデータ入稿が主流になっています。

紙の今後

単にデータの媒体としての紙の存在は徐々にその意義を縮小し、いつの日か終わりを迎えようとしているのかも知れません。また、コスト面や環境保護の見地からもさらに必要性が厳しくなっていくと思われます。

では、紙の使いどころはもう無くなってしまったのでしょうか?

 

紙を使う

紙の役割

上記のように紙の媒体としての役割は減少傾向にあります。ではそれ以外の用途の紙はどうでしょう?一番先に思い浮かぶのが名刺や店舗・商品などの案内カードではないでしょうか?これも情報を記録した媒体であることに変わりはありませんが、本来の用途の中で電子化されることはほぼありません。これらにはデータの媒体としての役割以上のものがあるのでしょうか?

紙のメリット

電子化されたデータにはない紙のメリットとは何か?ここまで散々減少だとか終わるだとか言ってきましたが、メリットを挙げてもたくさんあります。が、一番は「存在感」そのものではないでしょうか?名刺や紹介カードなどはカードを渡すことでその存在を認識する一助になっている気がします。カード(紙)に触れ、内容(データ)を読むことで存在をより強く認識し、データの受け取り先に効果的に宣伝を行えるようになっています。また、CDなども音楽を聴きながらジャケットを観たり、ライナーノーツを読んだりすることでも同じように印象に残る効果があるように思います。

効果的な紙とインキ

そういった効果を狙えば、データの媒体としての役割だけでなく電子データにはない「印象的な演出」という効果を付与することができるようになります。データの媒体としてだけなら上質紙の白い紙に黒インキで印刷するのが一番良いと思います。しかしながら、宣伝や紹介などの相手の印象に残るような演出を狙うなら、より効果的な紙の使い方がいくつかあります。

色上質紙はインキと同じ色で

色上質紙を媒体に同系色のインキで印刷すれば上品で少し洒落た感じを演出できます。派手さはありませんが落ち着いた雰囲気を出すことができます。ちなみに色上質紙に反対色のインキで印刷すると黒っぽくなってしまいます。

表情のある紙を使う

いわゆる凹凸のある紙ですが、大小のバンプを持つ紙で印刷することによって紙に触れた際により一層印象的な効果を生みます。少しですが以下に紹介します。

レザック66

レザーライクでレザックです。その名の通り皮っぽい模様が特徴です。

OKミューズコットン

ストライプ状の簀(す)の目が特徴的な紙です。

 

タント

細かな凹凸でザラっとした感触。また色の種類が多いのも特徴的です。

 

マーメイド

細かいさざ波のような模様のある紙です

シルバーのインキで印刷する

紙の種類ではありませんが、インキと紙の組み合わせの一例です。

印刷において黒い紙を使うことはあまりありませんが、シルバーのインキで印刷すると印象的な効果を生みます。また、少し光沢のある白い紙でも可読性は低くなりますが、清潔感のある高級な感じを演出することができます。

どちらの見本も同じ色(シルバー)で印刷しています。全然違う色に見えます。ホワイトバランスや露光量も影響していますが、インキと紙の組み合わせによって見え方の印象も変わってきます。

 

まとめ

紙の役割の変化を私なりに考察してみました。

 

至らないところも勉強不足のところもあったと思いますが、毎日紙を扱う仕事をしていて率直に感じたことです。そしてデジタル媒体にはない紙の良さも再発見できたように思います。

 

当社では様々な紙をご提案できますので、皆様のお名刺や、案内用のカードなどの作成をお考えであれば是非、当社営業までお声かけください。お客様の印象に残るような紙と印刷をご提案をさせていただくよう努力いたします。

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