目指せ!ローコスト・ハイパフォーマンスの静電気対策!印刷部VS静電気、その格闘の歴史と対応策

デザイン部
2017年12月20日

印刷におけるトラブルには様々なものがあります。
その中には未だ持って決定的な解決法のないものが多々あります。
そんなトラブルの中の一つ、静電気。
今回はそんな厄介者に私たち印刷部が過去より今現在まで取り組んできた対応策をまとめ、ご紹介したいと思います。

静電気トラブルとは?

静電気発生のしくみ

静電気発生のメカニズムなどは専門のサイトに詳しいので簡単にだけ説明をいたします。

物質を構成している原子(陽子、中性子、電子)には全てにおいて電荷があります。通常はこの電荷、所謂プラスとマイナスが均衡を伴って存在しています。ところが摩擦などでどらか一方が流れ出てしまい、プラスを多く持った状態、マイナスを多くもった状態が存在してしまいます。このような状態が「静電気を帯びた状態」です。印刷用紙にもこの状態が存在します。

印刷機械におけるトラブル

上記のような印刷用紙は磁石の様な状態になり、印刷用紙と印刷用紙、印刷用紙と印刷機械、印刷用紙とほこりやゴミ、印刷用紙と人、様々のものと引きつけ合ってしまします。私たち人間とドアノブなどのように「バチッ!」っていうのはありませんがこの現象が非常に厄介です。

印刷用紙と印刷用紙

ブランケットローラーを通過することによって印刷用紙にはインキが乗り、印刷物へと変化します。これを連続して1秒間に数枚行います。この時、帯電した用紙同士が引きつけ合い密着してしまいます。まだ乾ききってないインキが次の印刷用紙の裏面に移ってしまう「裏移り」というトラブルになります。

印刷用紙と印刷機械

印刷機械には見当装置というものが付いています。簡単に言うと、印刷物の模様を全て同じ位置に印刷する仕組みのようなものですが、帯電した用紙はこの見当装置にも影響を与えます。印刷用紙が印刷機械と引きあってしまうことで、見当装置を無効化してしまう現象が発生します。また、印刷機械の中でジャムってしまったり、最悪の場合、ブランケットが破損してしまう場合もあります。

印刷用紙とほこりやゴミ

当然のことながら印刷機械上にゴミの放置などはありません。ではなぜほこりやゴミが付着するのか?これは印刷機械の中にあるほこりやゴミ、正確には印刷用紙の剥離カスや紙粉といったものですが、印刷用紙が印刷機械の中を通過する際に付着してしまいます。これはこまめな清掃によって発生率を抑えることができます。

印刷用紙と人

これはオペレーターが精神的に辛くイライラしてしまう現象なので印刷物にはほとんど影響は出ないはずです。手や体に纏わりつきます。

発生する時期やタイミング

自然現象なので一概に明言することはできませんが、発生する時期は主に冬場から春先くらいまで、タイミングや条件どは、空気が乾燥している場合や、印刷用紙の種類や管理状態なども影響していると思います。

条件が合えば時期はあまり関係なく、湿度がきわめて低い状態などで発生確率が上昇するように思います。

印刷工場における対策

大手などの大規模印刷工場であれば、静電気はもとより、空気中に含まれる水分量によって用紙が変化しないように様々な設備が存在するのですが、それらの導入には莫大な初期投資とランニングコストが必要になります。効果は覿面だと思いますが、当社の様な小規模印刷工場ではあまり現実的な対策方法とは言えない気がします。しかしながら何らかの対策を立てないことには仕事になりません。比較的導入可能な対応商品、対応策をご紹介したいと思います。

対策用品

静電気対策の商品は数多く市場に出ていますが、当社で使用しているものを挙げてみました。これらは単独で使用することはあまり無く、静電気が発生した時はほぼ全てを同時に使用しています。

業務用加湿機(静岡製機)

商品というか、設備です。小規模の工場スペースに対応した小型の加湿機です。冬場はこの加湿機とエアコンとで空気中の水分量を調節します。湿度計と温度計を頼りに印刷に適した湿度になるようにしています。導入以来、給排紙のトラブルが減少したように感じます。

イオライザー(春日電気株式会社)

界面活性剤のスプレーです。説明書きによりますと「帯電しやすい絶縁物の表面にスプレーすると表面に界面活性剤から成る透明な導電性膜が形成され、静電気帯電を防止する」とのことです。印刷機械のフィーダーボード、または印刷用紙に直接スプレーして使用しています。スプレーした瞬間は静電気は確かに無くなったように感じますが、継続性が無いので頻繁にスプレーしてやる必要があります。

アストロ静電ブロッカー(日研化学研究所)

湿し水の中に添加して使用しています。摩擦を軽減し、印刷用紙の滑走性を高め静電気の発生を抑える効果があります。

静電ロープ(不明)

導電性能を持ったロープです。これを適当な長さに切ってフィーダーボードの上に垂らして使用しています。帯電している印刷用紙がロープに触れることで除電する効果があります。

できるだけ用紙全体に触れるようにした方が効果的であるように感じます。この静電ロープとアストロ静電ブロッカーは相性が良いらしく、同時に使用することで除電効果も上がるようです。

対策方法

当社が静電気対策用品の導入をしたのはつい最近のことで、それ以前は実にアナログな方法で対策を講じていました。実質かかる費用もほぼありませんし、中にはとても効果的なものもありました。

床に水を撒く

加湿機導入以前は頻繁にこの方法が用いられました。所謂「最後の手段」的なものですが、工場内の湿度は確実に上昇します。ですが、足元が滑りやすくなるのでやや危険です。現在は安全面から行っておりません。

印刷用紙のエイジングを行う

これも頻繁に行われていました。印刷用紙は基本的に外気に晒されず保管されています。そのため印刷時になって開封した時、空気中の水分量と用紙中の水分量にギャップが出て来る場合があります。それが用紙の変形を招いたり、静電気の帯電を招いてトラブルに繋がります。そのため対策として印刷開始前日より、用紙を開封し、外気に晒しておくことで、できるだけ印刷用紙内外の含有水分量を等しくなるようにします。

空調設備の活用・シャッターの開閉

これは加湿機の項目でも触れましたが、印刷工場内の湿度を常に一定に保つように冷暖房を付けたり切ったり、扉やシャッターの開閉等、湿度計と温度計を頼りに調整していました。これは加湿機を導入した後の現在でも行っています。

湯を沸かす

これが最も効果的な対策方法だったのではないかと思います。印刷機械のフィーダーボードの下で湯を沸かすことで、印刷用紙がフィーダーボードの上を流れる時に湯気の中を通るようにします。この対策を講じると嘘のように静電気が発生しなくなります。とても効果的な上、湯の中に卵を入れればゆでたまごも作れるので、とても経済的です。実際に夜食用によく作ってました。ただし注意点があります。湯気は冷やされると結露します。それが原因でフィーダーボードの上に水滴が発生してしまいます。すると当然、印刷用紙は流れなくなります。また、あまりに高温、大量の湯気の中を通過してしまうと印刷用紙の変形も招いてしまいます。そのため、一定時間で過熱を止めて、湯を冷やしてやる必要があります。微妙な温度調節が必要な上に、印刷機械が錆ないように注意を払ってやる必要もあります。

まとめ

いかがだったでしょうか?静電気対策には様々な商品が開発、流通していますし、その現場現場でオリジナルの解決法もあると思います。当工場がどのような対策を講じてきたのか、その一部にでも興味を持っていただけたら幸いです。

印刷工場にもその他の工場と同じように様々なトラブルがあります。今回はそんなトラブルの中の極一部である静電気をテーマに書かせていただきました。全て私の体験に基づいた内容になっておりますので、間違った解釈や、反論等もあるかと思いますが、ご容赦ください。

開業以来、先代の工場長に至るまで様々なトラブルを経験し、それに対応する策を模索してきました。限られたコストの中で、知恵を振り絞り、改善に向けて努力を重ねてきた歴史には最大限の敬意を払うとともに、今現在の工場で新たなトラブルが起こった時に、私自身もその歴史の一部として知恵を振り絞って改善に取り組みたいと思います。

カテゴリー:印刷について静電気対策